あの日あの時あの場所で?

復帰!(゚┏д┓゚)ノシ
by factfinder
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乾いたままで。15

 そのまま何も言えないでいると、司教が私の頭を抱きしめてくれた。優しく。そして、暖かく。
司教の法衣に零れ落ちる涙を止めようと目を閉じるが、あまり意味はなくぽつぽつと染みを作っていく。
 噛殺したような嗚咽が小さな礼拝堂に響き、その音がまた私の心から無性に悲しみを引き出す道具となる。
「・・ほら、そろそろ顔を上げなさい」
 結構な時間を司教の胸元へ顔を埋めていた私に、頭上から声がかかった。抱きしめられる事の暖かさに少しだけ慰められた私は、素直に寄りかかっていた体を起こしてから俯く。
 鼻をすすって、涙を袖で拭いて・・。本当に子供の様な行動をとる自分がとても滑稽に思えた。けど、一年は・・やはり短い。
「・・あのふてぶてしかったあなたが泣く姿を見たのは、コレが二度目ですねぇ」
 何故か嬉しそうに聞こえる司教の言葉を、鼻をすすりながら聞く。
「確かあの時は・・・」口元に手をやり、しばし考え込むように上を向いた司教は「そうだ、魔道協 会から派遣された方と狩りへ行った後の事でしたね」と続けた。
 何をするでもなく耳を傾けていた私は、貴重品入れの中から少し濡れたハンカチを出して、涙で濡れた目元を押さえた。
「アコライトのクセに支援をしない、と先方からの苦情をあなたに問い詰めたら、嫌いな人だったから支援しなかったと言い出した時は本当に困りましたよ」
「あ・・あの時は!本気でそう思っていたんです」
 私は目元を拭いながら必死になって自己弁護を開始した。
「あのひと自分の事ばっかりで、支援しか出来ないんだから切らすなとか・・本当に嫌だったんですよ」
 司教へ向いてそう言い切ると、間を空けずに答えが返ってきた。
「あなたね・・あの時はただの一度もそんな事言わなかったではないですか」
 そう言うと呆れたように頭を押さえる。
「まったく・・嫌いだったからとしか答えないあなたをしかりつけた時に何故言わないのですか」
「ぇ・・ぇぇ。そうでしたっけ?」私は腰を引き気味に尋ねた。そういえば・・・ふてぶてしくも、「嫌いなヤツだった」を連呼した挙句に、最後には泣いてしまった記憶が脳裏を過ぎる。
「ええ。そうでした」
「そうでしたね・・」
「・・・」
「・・・」
 なまじ思い出しただけ恥かしさが先に立ち、二の句が告げない私を、呆れたような半笑いの顔で睨みつけていた司教は、何かを言おうと口を開いた。けど、扉を叩くトントンという音に遮られ、頭を振って扉へ向かっていった。不意に開いた扉から、修道僧らしき人が申し訳なさそうに覗いている。今までの話を聞かれたかと不安になったけど・・まぁいいか。
「あの、紅茶をお持ちしました」
「ええ、ありがとう」司教はティーカップが二つ乗ったトレイを受け取ると、修道僧がその手首に下げていた鞄を見ると咎めるように尋ねた「それは?」
 何もそんな言い方をしなくてもと思ったが、私がここにいた頃もあんな感じだった事を思い出す。
「あ、えと、その」怒られたとでも思ったのか、どもりまくるその修道僧は、困ったように周囲を見渡して扉の方を指差した。
「あぁ、多分私にだと思います」そう言うと、なるべく目元の腫れた顔を上げないように歩み寄り「一昨日頼んでおいた服じゃないのかな?」とあたふたとし続けている修道僧に尋ねた。
「え、あ、はい・・」少し安心したように答えると、鞄を押し付けるように私に手渡し「し、失礼しました」と退場して行った。
「なんですかアレは」不機嫌そうにそう言うと、いつの間にやら教壇にトレイを置いて、ティーカップを両手に歩いてくる司教は「後で注意しておかなくては」片方を私に手渡す。
 不憫な修道僧に頑張れと言ってあげたかったが、名前も分からないし暇もないので、心の中だけで言ってあげる事にしてティーカップを受け取った。
「まぁ一時期のあなたよりはましですけど」
 受け取った瞬間に、何やら裏のありそうな笑みで顔を覆った司教は・・・レッティとの約束の時間10分前まで遠い過去に置いて来た恥かしい話をし続けた。
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by factfinder | 2006-05-01 00:15 |