あの日あの時あの場所で?

復帰!(゚┏д┓゚)ノシ
by factfinder
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乾いたままで。2

 想像以上行動未満というヤツで、すぐに故郷へ出発するという訳でもないが、3年以上帰る事がなくても何とも思わなかった私にとっては新鮮な感覚だった。
 多分思うだけで帰りはしないけど。
 そう決め付けると、ドアの横にある貴重品類を身につける。最後に杖を持ってドアを開くと、カーテンの隙間から零れていたような光量ではなく、目の奥を刺激するような光が私を覆った。思わず目を伏せてから、今日もいい天気だな。そう思うと、一階にある受付へと足を運ぶ。宿代払ってなかったはずだし。
 小奇麗な感じの廊下を、階段に向かって歩く。廊下と階段の境目に置いてある花瓶に花がいけてあったけど、何て名前なのかまでは分からなかった。ってどうしたんだろう。こんな事考えること自体どうかしてる。
 廊下の端にある階段を下りていると、布団を抱えた女中さんが前からやってきた。危なげにひょこひょこと階段を上がる十四・五歳のその少女は、手に持った布団の隙間から私を見ると、お邪魔でしたかと告げてきた。
 どうも立ち止まって見ていたらしい私は、「いえ、ごめんなさい」と言うと、少しだけ体を端に寄せてから歩き始める。何なんだ一体・・。どうも自分の行動がおかしくなったように思う。沸いて出た考えを振り切るように、頭を左右に振った。
 階段の先にある受付は少し広めに造られていて、椅子やテーブルが多数あるところを見ると、食堂も兼ねているのかもしれなかったけど、食欲もないので真っ先に受付に座る男の前に歩いていった。
「チェックかい?」髭に白髪と黒髪が混ざった少し年配の男は、そう尋ねながら宿帳らしき物をめくりはじめる。一泊いくらだったか忘れていた私は、財布を出すだけ出して、値段を言われるまで呆然と立っている事にした。
「3号室のお客さん?」そう言うと鼻の頭やら髭を触りだして「もうお金は受け取ってるよ」と言い出した。
 少しの間だけどぼーっとしていたものだから、話の内容が理解出来ずに反応が遅れる。
「・・・あ。昨夜の事あまり覚えてなくて・・。払いましたっけ?」少し戸惑った私は、耳を覆っていた髪を掛けなおすと「ごめんなさい。酔っていたみたいで・・」と続ける。
 私を直視もせず「あぁ、さっき出て行かれた人から貰ったんだよ」と答えると、手を振りながら、もういいからとでもいう様な仕草をする。
「はぁ」
 そう返事をした私は財布をしまい、立てかけていた杖を手に取る。珍しく宿代を払っていくヤツではあった訳だ。   
 受付の男から背を向け、出口に向かって歩き始めると、背を向けたはずの方向から声がかかる
「あんた・・ホントにプリーストかい?」
 どんな顔をしているか想像はついたから、顔を見るでもなくそのままの体勢で、そうですよとだけ答えた。
 あんまり言いたかないけど・・までは耳に入れ、そのまま出口に向かって歩き始める。いまさら無視した程度で、どうなるということも無いだろう。
 ドアを開くと、入退店を告げる鈴がからからと鳴る。気に留めず外に出ると、夏がそろそろ来るであろう光は、一層強く私の体を覆った。見上げると更に眩しく照りつける日差しに、目を細め、手をかざす。
 プリーストって損だな。心底そう思う。
 アサシンやローグがこんな事をしても何も言われないだろうに。歩きながら悶々とそんな事を考えているとため息が出てくる。
 そもそも聖職者なんていうけど、教義的な意味などあってないようなものだ。例え人身売買をしようがプリーストはプリーストだし、そんな事をしていたら、捕まるのはどんな職業でも一緒だ。ただ人を癒したり支援したりするのが得意な職というだけで、神様とか得体の知れないものにまで拘束されるいわれは無い。何より、ただ祈るだけで手に入れた力ではないのだから。純粋に私が努力して得た力のはずなのに、信仰心がどうのと言うのはどうかと思う。
 考えがまとまらずに、初夏の日差しの中を噴水方面に徘徊していると、路店通りが見えてきた。
「あ、タバコ」と、つい声に出た言葉は、路店通りの喧騒の中で立ち消える。考えても仕方ないから路店でも見てまわろうかな。
 欲しい物はタバコくらいで、後は特にはない。何より、ここ最近狩りにもろくに行ってないから、軍資金もつきかけているし。
 ふらふらと道端に店を出す商人たちを見てまわる。活気が凄い。わらわらと耳に入ってくる雑音は、私とは関係なく路店通りを活気で満たす。
 さすが首都なだけはあり、色々な物がある。有名な武具や防具。果ては収集品や食べ物まで。私のいた故郷では考えられない物の多さに、はじめてここに来た時は驚いたりもしたけど、今はそうでもない。当たり前の事で、日常の風景になってしまっていた。
 タバコ、タバコと。
 いつも、十字路少し南の辺りで、路店を出している商人が見つからない。仕方ないかと顔馴染みの商人からの購入はあきらめて路店を巡る。初夏だというのに強く照りつける太陽に嫌気を覚えもするけど、お目当ての物が見つからない以上歩くしかない。
 うんざりしながらも歩き続けた。けど、どこにも置いていないのはどうした事だろう。プロンテラの南端まで来てはみたがどこにも置いていなかった事に辟易すると、取りあえずは諦めて臨時広場へ足を運ぶ事にした。
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by factfinder | 2006-05-01 00:02 |