あの日あの時あの場所で?
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乾いたままで。6
放たれた矢を、ニューマに隠れた私は危なげなく避ける。赤い鎧に宿った弓兵の怨念、レイドリックアーチャーにレックスエーテルナを唱えると、レッティが一呼吸の後にダブルストレイフィングを叩き込んだ。刹那の差で撃ち出された二対の矢は、レイドリックアーチャーを貫き、怨念を霧散させる。
カシャンという音と共に、崩れ落ちた赤い鎧の残骸。私はソレに近寄ると屈み込み、何かアイテムが落ちてないか物色した。あまり苦もなく、鼠色の小さな欠片を見つける。
「あ、これなら・・さっきのとあわせると、売れるくらいのエルニウムにはなるかな」
そういうと重さを確認しながら、腰につけたポシェットしまいこむ。後は、怨念の触媒らしいブリガンと呼ばれる鉱石も、拾い上げて一緒にしまった。
いくら見た目が変わる事なく沢山入れる事が出来るといっても、あまり入れすぎるとあふれて出てくるし、重量はそのままだから重い物は重いので気をつけないと。などと考えつつ、辺りを忙しなく見続けるレッティを視界におさめた。
騎士団に来て三十分程経過したが、この自称PT初心者のハンターは、狩りの腕は確かだった。通常攻撃だけをとっても十分強いが、SPと相談しつつダブルストレイフィングを交ぜてくれるから交戦が楽だし、交ぜるタイミングも完璧とは言わないけどそれなりになってきて良かった。
狩り初めは、私の使うスキルの意味をあまり理解できていなかったらしく、レックスエーテルナの意味や有効活用のしかたを教えたり、マグニフィカートの効果を教えてあげたりとしてみた。そこは初心者と謙遜するだけはあってか、突っぱねたりはせず、素直に聞き入れてくれてやりやすかったのだけど。
「今のどんな感じでしたか?」私の視線に気がついたのか、頭をかきながら笑いかけてきた。
「はぁ」と答えると、立ち上がり「良かったんじゃないですかね」と笑った。
「そ、そうですか!」と、弓を持つ手でギュッと拳を握り締める。本当に嬉しそうに笑うレッティに、そうですよと、また笑いかけた。
「後はレアでも出ればいいんですけどね」私が歩き出すと、レッティもその後を追ってついてくる。
狩りの前にした打ち合わせで、私が前衛になって敵をひきつけ、その間にレッティが撃ち倒すと決めあった。初めは私が前に出ることに難色を示したレッティだったが、耐久力の話や、Agi型のレッティが囲まれた時にどのくらい避けきれるか、などとつらつらと説明した結果、最終的に向こうが折れた。今時こんな話を打ち合わせでするなど思ってもみなかったけど、昔に戻った気分になれて、楽しくなかったなどとはいえない。
「そうですねー」
少しだけ歩いた後「そう言えば」私は急に振り返ると、レッティの方を向き「いつもどこで狩ってるんですか?」と聞いてみた。
すぐ後ろをついてきていたらしく、急に振り向いた私にビックリしたのか、あまり楽な体勢とはいえない形で固まったレッティは、ええと、とどもりながら答えてきた。
「ス、スティングとかですかね」そういうと一歩分だけ後ろへ飛びのき「時計2Fとかも行きます」と続けた。
飛びのいた事を訝しく思ったけど、そこは無視して「ソロで?」と尋ね、ブレッシングと速度増加を重ね掛けした。
「ソロがほとんどですけど、たまに友達と」
「はぁ」
「音瀬さんはいつも騎士団に?」レッティの言葉を合図にか、私の後方から深遠の騎士が現れた。
「下がって!」と、私は怒鳴ると、足元にセイフティーウォールを発生させ、効果のなくなったアスムプティオを自分にかけなおす。レッティはというと、私の言葉を素直に聞き入れて、少し遠めに位置取り、深遠の騎士を狙って弓を構えている。
「まだ撃っちゃだめなんですよね」とレッティ。
「はぁ」とも「ええ」とも答えずに、深遠が私を目掛けて攻撃したのをセイフティーウォール越しに確認すると、レックスエーテルナを唱えた。レッティはちゃんと覚えていたみたいで、レックスエーテルナが発動したのを見届けたのを合図に、ダブルストレイフィングを雨のように撃ち放つ。
深遠の騎士は、漆黒の外套を影のように揺らめかせながら降り注ぐ矢の雨を避わすが、間に合いきれず、いくつもの矢が突き刺さる。苦し紛れか何やら詠唱を始めた。
「カリツが!」
その叫びを聞く前に、私はセイフティーウォールを背後に発生させ、一歩後ろに下がる。新しく発生させたセイフティーウォールに乗ると、レックスエーテルナを深遠の騎士に唱えた。
深遠の騎士の詠唱が終わると、カーリッツバーグが二対召還され、私の周囲を取り囲む。
セイフティーウォールに阻まれて攻撃は当たらない。けど、桃色の防御壁は、相手の攻撃が重なる毎に色合いを薄くしていく。また後ろにセイフティーウォールを・・と思った矢先に。
「音瀬さん!」叫び声と共に、チャージアローが私の真横を通り過ぎていく。吹き飛ばした相手は。
「血騎士・・。」
黒光りする巨大な甲冑を確認した私は呆然と呟くと、痛みと共に効果を失ったセイフティーウォールに気がつき、一歩後ろではなく、足元にセイフティーウォールを発生させた。まさか血騎士が沸くなんて。
焦る気持ちがレッティの放ったチャージアローの事を忘れさせてしまい、重症を与えているはずの深遠の騎士を倒すまでは、何とかなるだろうと判断してしまっていた。誤った判断だと気がついたのは、何故か走り来るレッティを見てだ。
「・・・なっ!?」何してるんだと怒鳴るより先に、自分にヒールを唱えた。ブラッディナイトに気を取られすぎてどこからか沸いていたレイドリックアーチャーに気がつけなかった。いつの間にか霧散したセイフティーウォールを掛けなおす事もできず、かと言ってレッティに来るなと叫ぶ事も出来ない。
レッティはブラッディナイトに近寄ると、続けざまにチャージアローを二度打ち込む。その間に一度切りつけられ、もう既に息が上がっているのがわかる。わかるだけで何も出来ないのが悔しい。
少し離れたブラッディナイトをそのままにしたレッティは、深遠の騎士目掛けてダブルストレイフィングを叩き込む。
二度程、計四本の矢を打ち込まれた深遠の騎士は、外套と剣だけを残して床に崩れ落ちる。ソレと同時に、カーリッツバーグ二対も消え失せた。
その事に安心するより先に「血騎士にアンクルを!」と叫んだ私が見た光景は、ブラッディナイトに後ろから切りつけられたレッティ。アスムが今の間に効果を失ったのか、さっきより出血が酷い。すぐさまヒールを唱え、アスムを詠唱する。けど、ソレより先にセイフティーウォールを唱えるべきだったと後悔した。
レッティはアンクルスネアを置くのに手間取っていたが、諦めてチャージアローを数度ブラッディナイトに打ち込む。道の奥にある壁にあたる程ブラッディナイトを吹き飛ばすと、漆黒の甲冑はヒュンという音と共にその姿を消した。
テレポでもしたのかな・・。しかし、危なかった。
少し遠くの方で私に向かって弓を射るレイドリックアーチャーを一瞥すると、足元にニューマを発生させ、レッティを睨み付けてからレックスエーテルナを唱えた。
「ご、ごめんなさい・・」と謝ったレッティはダブルストレイフィングを撃ち込むと「怒ってます?」と聞いてきた。
カシャンと音が聞こえると「前に出るなって・・!」と言いながらレッティに近寄り「言ったでしょう!」私は怒鳴る。
カシャンという音と共に、崩れ落ちた赤い鎧の残骸。私はソレに近寄ると屈み込み、何かアイテムが落ちてないか物色した。あまり苦もなく、鼠色の小さな欠片を見つける。
「あ、これなら・・さっきのとあわせると、売れるくらいのエルニウムにはなるかな」
そういうと重さを確認しながら、腰につけたポシェットしまいこむ。後は、怨念の触媒らしいブリガンと呼ばれる鉱石も、拾い上げて一緒にしまった。
いくら見た目が変わる事なく沢山入れる事が出来るといっても、あまり入れすぎるとあふれて出てくるし、重量はそのままだから重い物は重いので気をつけないと。などと考えつつ、辺りを忙しなく見続けるレッティを視界におさめた。
騎士団に来て三十分程経過したが、この自称PT初心者のハンターは、狩りの腕は確かだった。通常攻撃だけをとっても十分強いが、SPと相談しつつダブルストレイフィングを交ぜてくれるから交戦が楽だし、交ぜるタイミングも完璧とは言わないけどそれなりになってきて良かった。
狩り初めは、私の使うスキルの意味をあまり理解できていなかったらしく、レックスエーテルナの意味や有効活用のしかたを教えたり、マグニフィカートの効果を教えてあげたりとしてみた。そこは初心者と謙遜するだけはあってか、突っぱねたりはせず、素直に聞き入れてくれてやりやすかったのだけど。
「今のどんな感じでしたか?」私の視線に気がついたのか、頭をかきながら笑いかけてきた。
「はぁ」と答えると、立ち上がり「良かったんじゃないですかね」と笑った。
「そ、そうですか!」と、弓を持つ手でギュッと拳を握り締める。本当に嬉しそうに笑うレッティに、そうですよと、また笑いかけた。
「後はレアでも出ればいいんですけどね」私が歩き出すと、レッティもその後を追ってついてくる。
狩りの前にした打ち合わせで、私が前衛になって敵をひきつけ、その間にレッティが撃ち倒すと決めあった。初めは私が前に出ることに難色を示したレッティだったが、耐久力の話や、Agi型のレッティが囲まれた時にどのくらい避けきれるか、などとつらつらと説明した結果、最終的に向こうが折れた。今時こんな話を打ち合わせでするなど思ってもみなかったけど、昔に戻った気分になれて、楽しくなかったなどとはいえない。
「そうですねー」
少しだけ歩いた後「そう言えば」私は急に振り返ると、レッティの方を向き「いつもどこで狩ってるんですか?」と聞いてみた。
すぐ後ろをついてきていたらしく、急に振り向いた私にビックリしたのか、あまり楽な体勢とはいえない形で固まったレッティは、ええと、とどもりながら答えてきた。
「ス、スティングとかですかね」そういうと一歩分だけ後ろへ飛びのき「時計2Fとかも行きます」と続けた。
飛びのいた事を訝しく思ったけど、そこは無視して「ソロで?」と尋ね、ブレッシングと速度増加を重ね掛けした。
「ソロがほとんどですけど、たまに友達と」
「はぁ」
「音瀬さんはいつも騎士団に?」レッティの言葉を合図にか、私の後方から深遠の騎士が現れた。
「下がって!」と、私は怒鳴ると、足元にセイフティーウォールを発生させ、効果のなくなったアスムプティオを自分にかけなおす。レッティはというと、私の言葉を素直に聞き入れて、少し遠めに位置取り、深遠の騎士を狙って弓を構えている。
「まだ撃っちゃだめなんですよね」とレッティ。
「はぁ」とも「ええ」とも答えずに、深遠が私を目掛けて攻撃したのをセイフティーウォール越しに確認すると、レックスエーテルナを唱えた。レッティはちゃんと覚えていたみたいで、レックスエーテルナが発動したのを見届けたのを合図に、ダブルストレイフィングを雨のように撃ち放つ。
深遠の騎士は、漆黒の外套を影のように揺らめかせながら降り注ぐ矢の雨を避わすが、間に合いきれず、いくつもの矢が突き刺さる。苦し紛れか何やら詠唱を始めた。
「カリツが!」
その叫びを聞く前に、私はセイフティーウォールを背後に発生させ、一歩後ろに下がる。新しく発生させたセイフティーウォールに乗ると、レックスエーテルナを深遠の騎士に唱えた。
深遠の騎士の詠唱が終わると、カーリッツバーグが二対召還され、私の周囲を取り囲む。
セイフティーウォールに阻まれて攻撃は当たらない。けど、桃色の防御壁は、相手の攻撃が重なる毎に色合いを薄くしていく。また後ろにセイフティーウォールを・・と思った矢先に。
「音瀬さん!」叫び声と共に、チャージアローが私の真横を通り過ぎていく。吹き飛ばした相手は。
「血騎士・・。」
黒光りする巨大な甲冑を確認した私は呆然と呟くと、痛みと共に効果を失ったセイフティーウォールに気がつき、一歩後ろではなく、足元にセイフティーウォールを発生させた。まさか血騎士が沸くなんて。
焦る気持ちがレッティの放ったチャージアローの事を忘れさせてしまい、重症を与えているはずの深遠の騎士を倒すまでは、何とかなるだろうと判断してしまっていた。誤った判断だと気がついたのは、何故か走り来るレッティを見てだ。
「・・・なっ!?」何してるんだと怒鳴るより先に、自分にヒールを唱えた。ブラッディナイトに気を取られすぎてどこからか沸いていたレイドリックアーチャーに気がつけなかった。いつの間にか霧散したセイフティーウォールを掛けなおす事もできず、かと言ってレッティに来るなと叫ぶ事も出来ない。
レッティはブラッディナイトに近寄ると、続けざまにチャージアローを二度打ち込む。その間に一度切りつけられ、もう既に息が上がっているのがわかる。わかるだけで何も出来ないのが悔しい。
少し離れたブラッディナイトをそのままにしたレッティは、深遠の騎士目掛けてダブルストレイフィングを叩き込む。
二度程、計四本の矢を打ち込まれた深遠の騎士は、外套と剣だけを残して床に崩れ落ちる。ソレと同時に、カーリッツバーグ二対も消え失せた。
その事に安心するより先に「血騎士にアンクルを!」と叫んだ私が見た光景は、ブラッディナイトに後ろから切りつけられたレッティ。アスムが今の間に効果を失ったのか、さっきより出血が酷い。すぐさまヒールを唱え、アスムを詠唱する。けど、ソレより先にセイフティーウォールを唱えるべきだったと後悔した。
レッティはアンクルスネアを置くのに手間取っていたが、諦めてチャージアローを数度ブラッディナイトに打ち込む。道の奥にある壁にあたる程ブラッディナイトを吹き飛ばすと、漆黒の甲冑はヒュンという音と共にその姿を消した。
テレポでもしたのかな・・。しかし、危なかった。
少し遠くの方で私に向かって弓を射るレイドリックアーチャーを一瞥すると、足元にニューマを発生させ、レッティを睨み付けてからレックスエーテルナを唱えた。
「ご、ごめんなさい・・」と謝ったレッティはダブルストレイフィングを撃ち込むと「怒ってます?」と聞いてきた。
カシャンと音が聞こえると「前に出るなって・・!」と言いながらレッティに近寄り「言ったでしょう!」私は怒鳴る。
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