あの日あの時あの場所で?
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乾いたままで。4
少しうつむいて目を閉じているその人の前まで来ると、こんにちはと笑いかけてみた。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
あれ?無視・・?一分くらいは突っ立っていたように思う。なんなんだ。ええい、もう一度。
「こんにちは」
返事が無い。もしかしてこの人・・。
思い至ると、その人の正面でかがみこみ、顔を覗き込む。やっぱり・・。寝てるみたいだ。
「・・あの?こんにちは!」コレが最後だと言わんばかりに、間近で少し声量大きめなあいさつしてみる。と、その人はがばっと顔を上げ、私の方を少しの間凝視した後、何事かのたまいながら後ずさりだした。
「こんにちは」起きてくれた事に少しだけほっとして、私は四度目の挨拶を笑顔でする。けど、その人は後ずさりしたままの体勢で固まっていた。少しの間は我慢してみたけど、やっぱり組むのやめようかなと本気で思案し始めたところでやっと答えが返ってくる。
「こ、こんにちは・・」少し俯いて「あ、の・・何の用でしょうか?」と聞いてきた。
臨時広場で落ちていてその返答は無いだろうとも思ったけど、口には出さずに「狩り、行きませんか?」とだけ言ってみる。やっぱり返答がもらえたのが少したった後だったのは、この人が寝ぼけているからかもしれなかった。
「あ、え・・、ほんとですか?」何故か嬉しそうだ。
「え、ええ。と言うか、落ちてらっしゃったんじゃ?」落ちるというのは、狩りに誘って下さいと同じ事で、臨時広場で出来た造語だ。
「あー・・。そう言えば」何故か照れくさそうに頭をかきながら「落ちたまま誰も来ないから寝ちゃったんでした」
「はぁ。・・・どのくらい待たれてたんですか?」いつまでも屈んではいられないので立ち上がる。
「朝くらいからかなぁ」少し考えた後に遠い目をして「誰も誘ってくれなくて」と笑いながら言い出した。
それはご愁傷様でした、とは言わずに大変でしたねとおざなりに答えると、こう続ける。
「で、どうします?行きますか?行きません・・」
「行きます!」私の言葉が終わるよりも早くそう答えてきた。何故か前のめりになって、拳まで握り締めている。
「あ、ありがとう」私は少しだけ体を後ろへそらせて返事をすると、どこに行きましょうかと一応尋ねてみる。私の中では騎士団とは思ってはいたのだけど。
「ど、どこでもいいですけど」何故か急に俯きだしたのを見ても、あまり気には留めない事にする。ま、そっちの方が私にはいいけど、などと思った事は微塵も表情には出さずに、騎士団とかどうですか?と提案してみた。
「いいですけど・・」
「けど?」何か不満でもあるのだろうか。
「実はあんまり他の人と狩る事がなくて・・」
「なくて?」この時点で想像はついたけど、一応最後まで聞いてみることにした。
「上手に狩れないかもしれないです・・けど」
「初心者さん?」の割には装備もそれなりだし、初心者でくくるには結構強そうに見える。けど、と言う事が多い、彼を見た私の素直な感想だった。
「え、ええ」
頭をかきながら彼も立ち上がる。私は、聞くべきか少し悩んだ後、騎士団用の武器とかありますか?と尋ねてみた。
「友人から借りた物なら」
「なら別に構わないですよ」私は即答すると、PT作りますね、と告げてPT作成申請を出した。
「ペアで構いませんよね」プリとハンタでなら普通に行けるだろうと踏んだ私は、事も無げにそう言った。ら、彼は何故かビックリしたように目を丸くしだした。自信がないのだろうな、と、少し心の中だけで笑う。
一人でPT名をどうしようかと思案にくれていると、彼は私に何かを言いたそうな顔でオロオロし始めた。私からは何も言わないで観察していると、意を決したように「あ、あのっ・・!」と呼びかけられた。
「はい?」
「ボクみたいなPT初心者でいいんでしょうか?」さっきの様に拳を握り締めて「ハイプリさんなのに」
「はぁ」と答えた後、どう答えるべきか言葉を選ぶ。まさか狩りに行ければ誰でもよかった、などと言ったら、彼の気力が萎えてしまうかもしれなかったから「事前にいっていただければあまり気にしませんよ」と苦笑いで答えた。
PTを作成した後、彼に加入要請を飛ばすと「それじゃお互いに準備してきましょうか」と告げた。私の言葉を聞いているのか聞いていないか、何故だか少しうつろな表情になった彼に、速度増加を唱えてあげてからカプラ職員に会いに行った。後ろの方でありがとうございますと聞こえたが、答える事はせずにそのまま門をくぐる。初心者とかは別にしても、どうにもやり難そうなペア相手に心配が募った。
一人一人の力では対応しきれない程に敵の力が強力になって、力の見合う者同士が行動を共にする事が奨励されてから、もう何年も経過した。互いに知らない者同士が一時的に協力しあうというのは、奨励当初はとても画期的な策だったらしい。けど、冒険者と呼ばれる職業人種が増加し続けている今は・・。私の目から見ても、あまり好ましい物ではなくなってきた様に思う。大人数で狩りに行くより、少数精鋭で行く方が効率的に優れている為か、少し無理をしてでも少人数で狩りに行く。赤の他人より、一度でも組んだ顔見知りと狩りへ行く。
行動を共にする上での要職は、既にどこかのPTに組まれ、あぶれ出た人間はそのまま待ち続けるか、一人で狩りに行く事になる。冒険初心者や一部の職業には風当たりの強いものになったのではないか。とは思うものの、私自身がその要職ではあるから、あぶれる事などはほとんど無いし、可哀想だなと見ているだけなのだけど・・。PT初心者だからと、ここまで卑屈な人も珍しいように思えた。
フラフラと考えながら歩いていると、南門から少し行った所にカプラ職員が見えた。いつもの様に職員を捕まえて、あれやこれやとアイテムを引き出したり、預けたりする。
カプラ職員とは各自で持ちきれなくなったアイテムを一事的に預かってくれる人の事で、どんなに重い物だろうと、どんなに大量に渡そうと、笑顔で受け取って預かってくれるという不思議な職業の人達の事だ。
いつもの狩りの時より少し多めに、青石と白Pを引き出すと、装備も騎士団様に整える。まぁどんな事があるにせよ、お金かせがないと・・ね。
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あれ?無視・・?一分くらいは突っ立っていたように思う。なんなんだ。ええい、もう一度。
「こんにちは」
返事が無い。もしかしてこの人・・。
思い至ると、その人の正面でかがみこみ、顔を覗き込む。やっぱり・・。寝てるみたいだ。
「・・あの?こんにちは!」コレが最後だと言わんばかりに、間近で少し声量大きめなあいさつしてみる。と、その人はがばっと顔を上げ、私の方を少しの間凝視した後、何事かのたまいながら後ずさりだした。
「こんにちは」起きてくれた事に少しだけほっとして、私は四度目の挨拶を笑顔でする。けど、その人は後ずさりしたままの体勢で固まっていた。少しの間は我慢してみたけど、やっぱり組むのやめようかなと本気で思案し始めたところでやっと答えが返ってくる。
「こ、こんにちは・・」少し俯いて「あ、の・・何の用でしょうか?」と聞いてきた。
臨時広場で落ちていてその返答は無いだろうとも思ったけど、口には出さずに「狩り、行きませんか?」とだけ言ってみる。やっぱり返答がもらえたのが少したった後だったのは、この人が寝ぼけているからかもしれなかった。
「あ、え・・、ほんとですか?」何故か嬉しそうだ。
「え、ええ。と言うか、落ちてらっしゃったんじゃ?」落ちるというのは、狩りに誘って下さいと同じ事で、臨時広場で出来た造語だ。
「あー・・。そう言えば」何故か照れくさそうに頭をかきながら「落ちたまま誰も来ないから寝ちゃったんでした」
「はぁ。・・・どのくらい待たれてたんですか?」いつまでも屈んではいられないので立ち上がる。
「朝くらいからかなぁ」少し考えた後に遠い目をして「誰も誘ってくれなくて」と笑いながら言い出した。
それはご愁傷様でした、とは言わずに大変でしたねとおざなりに答えると、こう続ける。
「で、どうします?行きますか?行きません・・」
「行きます!」私の言葉が終わるよりも早くそう答えてきた。何故か前のめりになって、拳まで握り締めている。
「あ、ありがとう」私は少しだけ体を後ろへそらせて返事をすると、どこに行きましょうかと一応尋ねてみる。私の中では騎士団とは思ってはいたのだけど。
「ど、どこでもいいですけど」何故か急に俯きだしたのを見ても、あまり気には留めない事にする。ま、そっちの方が私にはいいけど、などと思った事は微塵も表情には出さずに、騎士団とかどうですか?と提案してみた。
「いいですけど・・」
「けど?」何か不満でもあるのだろうか。
「実はあんまり他の人と狩る事がなくて・・」
「なくて?」この時点で想像はついたけど、一応最後まで聞いてみることにした。
「上手に狩れないかもしれないです・・けど」
「初心者さん?」の割には装備もそれなりだし、初心者でくくるには結構強そうに見える。けど、と言う事が多い、彼を見た私の素直な感想だった。
「え、ええ」
頭をかきながら彼も立ち上がる。私は、聞くべきか少し悩んだ後、騎士団用の武器とかありますか?と尋ねてみた。
「友人から借りた物なら」
「なら別に構わないですよ」私は即答すると、PT作りますね、と告げてPT作成申請を出した。
「ペアで構いませんよね」プリとハンタでなら普通に行けるだろうと踏んだ私は、事も無げにそう言った。ら、彼は何故かビックリしたように目を丸くしだした。自信がないのだろうな、と、少し心の中だけで笑う。
一人でPT名をどうしようかと思案にくれていると、彼は私に何かを言いたそうな顔でオロオロし始めた。私からは何も言わないで観察していると、意を決したように「あ、あのっ・・!」と呼びかけられた。
「はい?」
「ボクみたいなPT初心者でいいんでしょうか?」さっきの様に拳を握り締めて「ハイプリさんなのに」
「はぁ」と答えた後、どう答えるべきか言葉を選ぶ。まさか狩りに行ければ誰でもよかった、などと言ったら、彼の気力が萎えてしまうかもしれなかったから「事前にいっていただければあまり気にしませんよ」と苦笑いで答えた。
PTを作成した後、彼に加入要請を飛ばすと「それじゃお互いに準備してきましょうか」と告げた。私の言葉を聞いているのか聞いていないか、何故だか少しうつろな表情になった彼に、速度増加を唱えてあげてからカプラ職員に会いに行った。後ろの方でありがとうございますと聞こえたが、答える事はせずにそのまま門をくぐる。初心者とかは別にしても、どうにもやり難そうなペア相手に心配が募った。
一人一人の力では対応しきれない程に敵の力が強力になって、力の見合う者同士が行動を共にする事が奨励されてから、もう何年も経過した。互いに知らない者同士が一時的に協力しあうというのは、奨励当初はとても画期的な策だったらしい。けど、冒険者と呼ばれる職業人種が増加し続けている今は・・。私の目から見ても、あまり好ましい物ではなくなってきた様に思う。大人数で狩りに行くより、少数精鋭で行く方が効率的に優れている為か、少し無理をしてでも少人数で狩りに行く。赤の他人より、一度でも組んだ顔見知りと狩りへ行く。
行動を共にする上での要職は、既にどこかのPTに組まれ、あぶれ出た人間はそのまま待ち続けるか、一人で狩りに行く事になる。冒険初心者や一部の職業には風当たりの強いものになったのではないか。とは思うものの、私自身がその要職ではあるから、あぶれる事などはほとんど無いし、可哀想だなと見ているだけなのだけど・・。PT初心者だからと、ここまで卑屈な人も珍しいように思えた。
フラフラと考えながら歩いていると、南門から少し行った所にカプラ職員が見えた。いつもの様に職員を捕まえて、あれやこれやとアイテムを引き出したり、預けたりする。
カプラ職員とは各自で持ちきれなくなったアイテムを一事的に預かってくれる人の事で、どんなに重い物だろうと、どんなに大量に渡そうと、笑顔で受け取って預かってくれるという不思議な職業の人達の事だ。
いつもの狩りの時より少し多めに、青石と白Pを引き出すと、装備も騎士団様に整える。まぁどんな事があるにせよ、お金かせがないと・・ね。
by factfinder
| 2006-05-01 00:04
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