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あの日あの時あの場所で?

復帰!(゚┏д┓゚)ノシ
by factfinder
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乾いたままで。3

 臨時広場とは、プロンテラの南門を出てすぐの場所にある空き地のことをさす。空き地と言っても囲いが在る訳ではなくて、ただ誰とも無く人が集まり始めたその場所を、臨時広場と呼ぶようになったらしい。
 門の前を横切ろうとすると、衛兵がこちらに向かって手を振る。誰だったか忘れていたけど、笑顔でそれに答えてから門をくぐった。目の前に広がる平原・・ではなくて、人垣。本当に目と鼻の先と言うヤツだ。
 広場を見渡すと色々な職業の人が立ち話をしていたり、狩りの募集をしていたりした。お昼頃とは言ってももう既に夕方に近く、募集している人などあまりいないかと思ったが、以外にもそうでもなかったらしい。
 結構あるな。などと変な感心をしながら少し歩き回り、募集要項を見て回る。
 〟募:棚7F 現:狙占魔聖〟とか〟募:プリさんニブルでも〟〟落:狩 ペアでも臨でも〟などなど。見回るだけで行く気などさらさら無かったから、本当に見ているだけなのだけど。
 「ねぇ一人?」キョロキョロと辺りを見回していたのが暇そうに見えたらしい。誰とも知れないが話しかけられた。「一緒にニブルヘイムに行かない?」
 声のした方を見ると、騎士らしい姿をした男が立っていて、こちらに手を振りながら近寄ってくる。
 「はぁ」と返事をしてからどうしようかと考え込む。あまり狩りに行く気にはなれないな・・。と苦笑いをしつつ相手の方に体を向けた。
「ペアでいいかな?」中々の美青年で、さわやかに笑うと私の正面に立って「どう?」と質問を重ねてくる。私は行くとも言ってないはずなんだけど、とも言えず苦笑を深めた。お金も心許ないし、このまま狩りに行っても全然構わない・・けど。いつもなら適当に相槌を打って、狩りの準備に取り掛かるはずなのに、どうした事か気分が乗らない。
「ねぇ行こうよ」とさりげなく手をつかまれたところで我に返り「ごめんなさい」と告げて、私は街中へと駆け出した。あっ、という言葉に背中を押されるように。
 門をくぐり、少し行ったところの家屋の影で、上がった息を整える。おかしい。今日は本当におかしい。手を握られたくらいで走って逃げるなんて、どうかしてる。宿屋で振り切ったはずの考えがまた沸いて出てきた。どうにも今日は・・。まぁいい。こうなったらタバコ・・でも探そう。
ふらふらとまた路店通りを歩き始める。先ずはさっき諦めた顔馴染みの商人さんから探そうかな。そう決めると、十字路に足を向ける。
雑踏の中左によったり右に寄ったりしながら歩いていると、カプラ前を横切るところで、ふとその商人さんの顔が目に入った。
「あれ?こんにちは」と近寄りながら挨拶をする。
向こうも私に気がついたみたいで「あらー。こんにちは。」とこちらを向いて手招きをしてきた。
「今日はいつもの場所で出さないの?」
「ちょっと蚤市に顔出しててね、場所とられちゃったのよ」
「へぇー」いつものように屈託無く笑うそのおばさんを見て、私も笑い返すと、あ、そうだと続けた。
「タバコあるかな?そろそろ、前に買った分切らしちゃいそうで」ごそごそと財布を出す。
「あぁ、そうそう」それには答えず、今度はおばさんがごそごそと何やらカートを探し出した。「あったあった、タバコ吸いならどうかねと思ったんだけど?」
手に握られていたのはパイプタバコ。銀細工が綺麗な細めのデザインで、パイプタバコというより・・。
「ほら、アマツの人から買ったんだけどね、何て言ったっけ・・」考え込むように頭を傾げる。「あ、そりゃ100kだよ!」けど、辺りの事も見てはいるようだ。
「キセル?」と私は答えると、おばちゃんの近くにかがみこむ。
そうそう、とおばちゃんは答えると、私にキセルを手渡して、どうだいと言うような目で私を見た。
綺麗だなぁ。狐が銀で意匠されてるのかな。木でできた柄の部分にも何やら彫ってあり、握り心地も申し分ない。
少しの間だけ見惚れて「んー、いくら?」と聞いてみた。
「おまけして3Mくらいかね」少し得意げに高額をつけてきた。「それ、本当はもっと高いはずさ」
正直手元にそんなお金は無い。けどこれは・・欲しい。「もう少し安くなんない?」手を合わせて「お願い! 」頭を下げてみた。
「まぁ・・これからも、うちでタバコの葉を買ってくれるってんなら2.5Mにまけたげる」と少し笑って言ってくれた。けど、その額ですらない。
「あー・・ちょっと相談いいかな」と少し頭をかきながらおばちゃんに近寄ると、耳元で「一週間だけ待ってくれない?今ちょっと手持ちが無くて」
「ま、あんたならいいけどね。それ以上は待てないよ?」と腕を組んでニヤリ。
「さっすが!話せるっ」と抱きつくと、おばさんはよしなよと笑いながら言ってきた。
立ち上がると、おばさんに手を振りながら「それじゃ一週間ね」と言って背を向けた。あぁ、待ってるよという言葉を背中で受け取り、懲りずに臨時広場へ向かう。さっきの騎士がいたら連れて行ってもらうか。少し前までの陰鬱な気分はどこかへ行ってしまったようだった。
都合三度目の通過にも、衛兵は驚くことも無く、こちらに手を振ってくるだけだった。誰だかわからないけど。

臨時広場へつくと、周囲を見回して募集要項を確認して回る。なるべく金銭効率のいい狩場で・・と、考えながら歩き始めて、広場の隅の方まで行ってみる事にする。
少しの間に募集は少なくなっていて、さっきまで募集されていた臨時はもう出発しているようだったし、騎士もいなくなっていた。まぁいなかったらいなかったで、全然構わないのだけど。
ふと、どんどん出発していく臨時の中で、さっきも見た募集主が目に留まった。〟落:狩 ペアでも臨でも〟とある。ハンターか。騎士団なら・・いいかも、と思いつつ、その募集主に私は近寄る。
by factfinder | 2006-05-01 00:03 |